フューチャーリンクでは『事業と個人の成長をつなげる』ことを目指しており、事業成長や個人成長のために必要なことは何かを、様々な視点から紹介します。
弊社の松井とは20年来の付き合いである株式会社シンクロの西井さんは、訪問国数150か国近くのバックパッカーである一方で、複数社の経営に関わり、国内外のスタートアップに出資もしている他、執筆や講演、メディア露出も多数あります。
西井さんの人生観は、バックパッカーの経験から得た「自由さ」や「強さ」から生まれ、ご自身のビジネススタイルに大きな影響を与えています。
多くの経験と小さな成功体験が可能性を広げる
---今のような人生の歩み方となったきっかけを教えてください。
西井さん:多分、バックパッカーだった時代が自分を作ってくれていると思います。国立の大学院を卒業して、大手企業へ就職したものの、「どうしても、やりたい」と考えて、20代の若いときに会社を辞めて世界一周に行くという選択肢をとりました。その結果、王道のキャリアを歩む事を止めてしまいました。
---バックパッカーは、その後の人生にどのような影響を与えていますか?
西井さん:バックパッカーにも色々な人がいます。本当に自由に生きている人もいますし、有名な起業家・経営者もいます。学生時代にバックパッカーしていた人は、社会に戻っても、自分のキャリアは、自分で決めていると思います。
私が経営をしているシンクロ社の行動指針も“Be a backpacker.”としていて、「未知への好奇心を持ち続け、困難な状況こそ、笑って進める強さを持ち、さまざまな価値観との出会いを楽しむ」ことを大事な価値観としています。
自分の道を自分で決めることが個性になる旅は、楽しいことだけではなく、美しい景色を見るだけでもありません。大事なのは、自分で自分の道を作ることだと思います。特にバックパッカーをしている人は、先に何があるかを考えずに、ただ目の前の自分がやりたいことを一生懸命にやっていて、そのあたりが起業家や経営者と共通する特性があると思います。
---目の前のやりたいことをやることについて教えてください。
西井さん:2~30年前の自分が学生だった頃の「良い職業」「良い生き方」が、今は全然違う形になっています。例えば、今は終身雇用の時代でないことは明らかです。プロ野球の大谷翔平選手のように目標をしっかり持って、自分の道を見つけている人は、その中で最適化をできると思います。
しかし、私の場合、「将来何したい?」と聞かれても、明確な目標を掲げません。「一生を賭けて、これをやり切る」というよりも、目の前の小さなことにもやりたい事がたくさんあります。面白いことに出会って、そこで成果を出す事で、成功体験が体に染みついていきます。元々そうだったわけではなく、たくさんの経験を積み重ねてきた結果、そうなってきたと思います。自分が好きなことをやっている限り、夢中になれるし、自分が好きなことをやる時間を増やしていけば、それが良い方向に進んでいきます。
---行動することが大事ということですか?
西井さん:10年前に会社を辞めて独立したときも、多くの人から「起業した場合、本業一本に絞らないと中途半端になってしまう」と言われました。その中で、オイシックスから兼業での執行役員のオファーをもらい、起業と上場企業の経営参画のどちらもやるという決断ができたと思います。今や副業や兼業が根付いてきましたし、やりたい事をチャレンジする前から諦めるのではなく、まずは、やってみる、行動してみるということは、非常に大切な事だと思います。
兼業に近い話で言えば、リモートワークもそうです。シンクロでは、コロナ禍のずっと前からリモートワークを活用しています。そもそも旅仲間であったメンバーから「フィリピンで出来る仕事ありますか?」といった相談があった時に、「それでは、リモートワークで、ウチの仕事をやってみてよ」と伝えて、始めてみたところ、普通にリモートでも仕事が出来ることが分かったので、シンクロではリモートワークが根付きました。今はともかく、当時では、かなり珍しい働き方だったと思います。それは時代先取りをしていた訳ではなく、たまたま見えていた世界が先を行っていて、自分はそっちの方がいいと思いました。ロジカルに考えるのではなく、感覚的に好きだと思ったから、そういう働き方をしています。
その環境に入り、行動してみる。そして、多くの選択肢を持つ
---不確実なこと、だれもやったことのないことについて、不安になる場合があります。西井さんはどのように考えますか?
西井さん:大学院を卒業した後に、1年働いてすぐ辞めて世界一周に行った時もそうですし、世界一周から帰ってきて日本で就職しなきゃいけなかった時も、不安になりました。その中で、自分がラッキーだと感じるのは、国内外で、自分と同じような選択をしている人々を見てきたことです。例えば本で読むような偉人の話は遠く感じますが、身近な友人に独立して生計を立てている人がいたり、旅行から帰ってきて自分でビジネスを成功させている人がいたりします。これらの人々を見ていると、未知の世界への冒険はそう珍しいことではないと感じます。そこから戻っても成功が出来るのだと感じました。自分が、世界を旅して、様々な人々と出会った結果、自分の中の「常識」の枠を広げることが出来て、多くの選択肢を持つことが出来るようになったのだと思います。
---何かをしたいと思った場合、まずはその環境に入っていくことが大事かもしれないですね。アメリカの起業家の名言に「自分の周りの5人を平均すると自分になる」がありますが、それに近い感覚かもしれませんね。
西井さん:その通りだと思います。もし、私が18歳の時に地元に残っていたり、24歳の時に普通に就職していたら、全然違う人生を歩んでいたと思いますし、今の人格も違っていたかもしれません。様々な場所に行って、人との出会いがあったことが、自分が楽しいと思える環境を作ることが出来た一番の要因だと思います。また今も、会社を上場させてからもチャレンジし続けている人たちを近くで見ています。そのような人たちと一緒の環境にいると、それが当たり前になるので、すごく良い刺激をもらっていると思います。
---西井さんぐらい実績を出すと、「自由に行動をしたい」という気持ちと、「周りからコミットをしてほしい」という期待感があると思います。今後に関しては、どのような働き方を考えているのでしょうか?
西井さん:全てを完璧にやろうとせずに、自分の持ち場を明確にして、得意な人が得意なことをやって、そこで実績を出せればと思っています。日本だと、肩書きが偉くなると、現場から離れてマネジメント特化のキャリアの方も多いと思います。一方、北欧のスタートアップを見ると、CEOとCMO、CFOは、それぞれ自分の役割分担があり、CEOが一番偉いとかじゃない。要は、企業が役割分担をきちんと行い、フラットな組織運営をしていることが重要です。そのような選択肢がある場合、自分がどちらを選びたいかを考えればいいと思います。全てを手掛けたい、コントロールしたいと思うCEOもいるでしょうし、そういう人がいることも理解しています。それはそれで良いと思いますが、私の場合はその選択肢はなく、得意な分野で力を出したいと思っています。
---周りの皆さんは、西井さんの考え方を理解しているのでしょうか?
西井さん:シンクロのメンバーは、もちろん理解してくれてると思います。たぶん(笑)。そして、オイシックスの場合も、理解をしてもらえていると思います。長い期間、お互いにコミュニケーションを取っているので、自分がこれをやる、あなたがこれをやるという分担ができていると思います。もし、相互理解がないまま会社の仕組みの中に自分をハメようとすると、うまく機能しなくなると思います。
---なぜ、うまくいかないのですか?
西井さん:例えば、あるマーケティング支援の案件に週1で入って、結果が出てくると、大抵「週5で関わってください」と言われます。その会社の中では最適かもしれませんが、私にとっては全然最適ではありません。
例えば、今日私は東北のスキー場に来ていて、ここの代表の方から相談があるという話を聞いています。トップレベルの人とお話しするので、当然経営課題だったり、私が普段知らない話がたくさん聞けますし、それに対して私も自分の観点から適切なアドバイスをすることになります。なかなか一社にいるとこのような経験はできませんが、複数社に所属していることで、それが全く違う事業で役立つことがあるのが自分の強みです。もし1社に閉じ込められたら、自分の力は1人分しか出ないと思います。だから、もっと稼働を増やしてと言われても、増やしたらパフォーマンスを出せなくなると思います。それを理解してもらうためにコミュニケーションを取って、相互理解をするように努めています。