【プロフィール】
株式会社hacomono 代表取締役CEO 蓮田 健一
株式会社エイトレッドの開発責任者としてX-point、AgileWorksを生みだす。
2011年に震災で傾いた父の会社を継いだ後、再びプロダクトビジネスに挑戦するため、2013年7月に株式会社hacomono創業。
【最近の事業の状況】
▼松井
私自身、現在、2種類のジムに行っているのですが、両方の店舗でhacomonoが導入されています。
既に6000店舗に導入されるなど、数字面からも成長が見て取れますが、最近の事業成長の手応えはいかがでしょうか?
▼蓮田
当社の導入店舗数はフィットネスクラブに限らず、ダンススタジオ、インドアゴルフ、ゴルフ練習場、サッカースクール、カルチャースクール、サウナ、公共施設など幅広く増えています。
フィットネス業界だけをとっても市場全体が成長しており、これまでは市場規模が4000億円と言われていて、コロナ禍で落ち込んだ時期もあったのですが、2024年度には7000億円になるとまで言われています。
参考:船井総合研究所「フィットネス・ジム事業者向け フィットネス業界時流予測レポート2024 ~今後の見通し・業界動向・トレンド~」
https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/jy-fitness_S055
DXによる生産性向上でもhacomonoが貢献できている実感はあり、分かりやすい例はchocoZAPやピラティス、24時間ジムなど業態の多様化・多店舗化があります。
当社も引き続きDXを通じて、市場規模 1兆円超えに貢献していきたいです。
▼松井
コロナ禍から脱して、フィットネス市場が拡大をしているのですね。
hacomonoを導入しているフィットネスクラブの経営者の方々の記事を拝見したのですが、20代中盤の方が、創業2年で40店舗以上展開するなど、フィットネス業界が多様化しながらも、急成長していることを知って驚きました。
▼蓮田
当社のシステム「hacomono」を使って、数年で数10店舗展開しているジムはどんどん増えています。
また、大手企業も新ブランドを立ち上げる際に当社を活用するなど、業界全体の成長と多様化に貢献できている手応えがあります。
▼松井
蓮田さんは、日本のフィットネス参加率を3%から10%に引き上げる取り組み「PROJECT 3%→10%」を発足させてから2年。
外から見ていると、ここまで急速に実現するとは思わなかったのですが、蓮田さんにとっては、当時から見えていた景色なのでしょうか。
▼蓮田
長年、さまざまな仮説を立ててきました。
運動習慣が必要な人、運動したいけれど機会がない人、特定のスポーツをしたいと具体的に考えている人が対象です。これらに対する解決策を提供するため、仮説を詳細に分析し、具体的な計画を立ててきました。
「hacomono」はB向けサービスですが、私たちはエンドユーザーの体験向上を最も重要なポイントだと考えています。
【経営者として】
▼松井
以前、蓮田さんが受けた適性診断で、
「マネジメントというよりはリーダーシップ型。リーダーシップスタイルとしては、ビジョン型・実力型の特性」
と診断されたようですが、蓮田さんは、泰然自若とした自然体のイメージだったので、少し意外な診断でしたが、ご自身でもリーダーシップタイプだと認識されているのですか?
▼蓮田
はい。
「未来志向」であったり、「ロマンや夢を持っている」といった点で、リーダーシップタイプだと思っています。
あとは、エンジニア出身ということもあり、「顧客志向、ものづくり志向、デザイン経営思考」などが自身の特徴だと考えています。
▼松井
昔からそのような自己認識をしていたのでしょうか。
▼蓮田
徐々に自己認識を深めていきました。
例えば、採用競合する場合でも、他社が「戦略コンサル出身」「連続起業家」などの経営者がいた場合、自分との違いを意識することになります。
自身の特徴を認識しながら、自分の足りないところを、他のメンバーに協力してもらえていると思います。
自身が今の経営スタイルになったのは、父の会社を継いで、稲盛和夫さんの勉強会に参加をして、「会社の存在意義」や「原理原則」「経営者として基準を高くする」ことを学んだ影響が大きいと思います。
【組織の特徴】
▼松井
私も候補者の方に御社を紹介させていただく際には、
「40代エンジニア出身の経営陣で、地に足のついた事業作り、プロダクト作り」
「顧客志向で、本質をズラさない」
などをポイントに、お話をしていると思います。
▼蓮田さん
実際に、当社の誠実さや社会的なミッションに惹かれて入社をするメンバーが多いです。スタートアップ業界には「一発、当てたい」という動機で入社する人もいますが、当社では「継続可能な事業や組織作り」が行われており、顧客やユーザーに、本質的な価値を提供しています。このように、納得度の高い、魅力的な働き方ができると感じています。
▼松井
弊社から御社に入社をしていただいた方々の半数以上から、入社後インタビューを取っているのですが、入社後の満足度は非常に高いです。
特に皆さんが仰るのは「目の前の数字と、本質的なユーザー価値だと、迷わず後者を取る会社」だということです。
そこの信頼感は絶大です。
数字のプレッシャーもある中で、目の前のことではなく、本質的な判断が出来ることは素晴らしいと思いますが、それが出来るのは、なぜなのでしょうか。
▼蓮田さん
プレッシャーがあるからこそ、私は原理原則に沿った判断を心がけています。この決め方をすることで、判断が楽になります。
自分自身で、「その判断が美しいかどうか」という基準を設けています。
もちろん、組織には課題が存在し、常にすべてが上手くいくわけではありません。
ただ、そのような状況でも、CEOとしては笑顔を保つことが大事です。
サッカーに例えるなら、地区大会、全国大会、そしてW杯を目指すかによって判断が変わります。
地区大会で妥協するなら、目の前の問題解決だけで良いのかもしれませんが、大きな成果を本気で求めるのであれば、時間を掛けてでも本質的な解決策を見つけ出す必要があります。
▼松井
少し遅れることよりも、本質からズレることを避けた判断をしているのですね。
▼蓮田
当社には、有名企業から転職される方も多くですが、単に
「他社はこれを実施しています」や「この方法で目の前の課題は解決します」
という即時解決型の『打ち手思考』に基づく判断には、NOを出すことが多いかもしれません。
▼松井
目の前に便利グッズがあっても、むやみに手を出さないということですね。
表層的な課題解決は、本質的な課題解決の機会を奪うことになりかねないですし。
とはいえ、数百人の規模感になると、その蓮田さんの考え方が伝わりきらない場合もあるかもしれません。
ちょうど今が難しい状況でしょうか。
▼蓮田
去年、一昨年あたりに、そういう課題感にもぶつかりました。
現在はやや落ち着いてきた印象です。
組織創りにおいても、ブレなかったのは、良かったです。
▼松井
ぶつかったり、衝突があったからこそ、hacomono社らしさの輪郭が明確になってきているのかもしれませんね。
【今後の事業成長】
▼松井
ウェルネス業界だけではなく、公共運動施設をはじめ官公庁との取り組み、Fintech、IoT、プロスポーツチームとの連携、部活動など、今後、色々な事業展開の可能性があるかと思いますが、特に優先順位が高いものは何でしょうか。
▼蓮田
まずはFintechですね。
クレジットカード決済や口座振替の顧客体験を改善させるほか、スタッフへの給与支払いや備品の共同購入機能など「業界特化型の金融事業」も模索していきたいです。
また、今後の日本はスマートシティの概念を取り入れ、積極的にその方向へと進化していくでしょう。
大手デベロッパー企業や、Jリーグなどのプロスポーツ球団と連携し、「hacomono」を複数の施設に一斉に導入することで、『スマートウェルネスシティ』構想を積極的に推進したいと考えています。
スポーツと自治体の連携が日本の社会課題を解決するための有効な手段であると確信しています。
官公庁との取り組みは、予算の兼ね合いもあり、通常は年度ベースで進行しますが、来年や再来年に向けて面白い動きが幾つかあります。
早ければ年内にも、凄く良い事例を作り出すことができそうですし、成功事例があれば、その後の展開がさらにスムーズに進むでしょう。と展開していきやすい。
また多くの企業や支援者が協力を申し出てくれており、多様な選択肢を持つことができています。
▼松井
なぜ、ここまで、皆さん、御社に協力してくれるのでしょうか。
蓮田さんのお人柄もあると思いますが、それだけではないと思いますし。
▼蓮田
事業に共感をしてくれることは多いですね。
世の中的にも、ちょうど「hacomono」のようなプロダクトが求められていました。
たとえば、経済的に成功した人の多くが健康習慣を持っています。これは、人の幸せが大いにウェルネスと関連していることを示しています。
これが日本で広まっていない理由が、高い会費や、フィットネスがガチ勢だけの空間だという先入観があるかもしれません。
私はこの状況を変え、フィットネスをもっと民主化したいと考えました。
例えば、アメリカだと月額15ドル〜20ドルほどのジムが上場しているのですが、そのジムには、ユーザーがカジュアルに楽しめるような仕組みがありますし、スウェーデンだとトイレに行くような気軽さでジムに行きます。
私たちが取り組んでいるのは、単なるサービスの提供以上に、社会のカルチャーを変えることです。
その意味では、SaaSというビジネスモデルに限定せず、ハードウェア分野にも広がりを持っています。例えば、入退室管理のための多様なシステムを提供しており、
これによって、店舗や空間の効率的な管理が可能となり、場所のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。さらに、AIカメラを活用して、プールでの事故防止に取り組むなど、無人ジムの安全な運営にも貢献しており、これにより健全なジム経営が実現します。
まだ公に言えない話もありますが、、「hacomono」の活用範囲は非常に広大です。
世の中のあらゆる場を在庫と見なし、それを管理下に置くことにより、私たちの事業は、新たな段階へ進むことができると考えています。
▼松井
身近な産業でありながらも、知らないことも多く、好奇心が刺激されました。
事業としても色々な可能性がありますし、動きが速い業界なので、話は尽きないですね。
▼蓮田
そうなんです。
当社のメンバーが、社外の人と話す時には、話が尽きない事が多い印象があります。
まだまだできることや広がりが沢山ありますし、関わるみんながウェルネスのことが好きなのだと思います。
ウェルネス業界は、「成長産業」「社会的意義」「変革可能」「高い熱量」など、面白みを感じられる部分が沢山ある領域だと考えています。